第96章 やることなすこと滅茶苦茶じゃん!
私が楽屋へと戻ると、彼は熱心に携帯と睨めっこをしていた。画面を確認しなくても、私には分かる。あの指の動きは、SNSのチェックやメッセージを作成しているのではない。
あの動きは、ゲームに興じているに違いない。
くっ!とか、よしっ!とか言っている彼の後ろから、そっと画面を覗き込む。
『あぁ、スキルを使うタイミングが早いですね』
「うわぁ!!なっ、なんだよ、お前!」
『もう少しタイミングを遅くすれば、上手くフィーバータイムに繋がってスコアが上がるんですよ』
「そういうこと訊いてんじゃねぇから!!」
スマホを放り出し、こちらを睨み上げる悠。せっかくアドバイスを送ったというのに、実行はしてくれないのだろうか。
「っていうかさ…お、怒らないわけ?」
『あぁそうでしたね。
亥清さん。さっきの態度は頂けませんよ。彼に失礼でしょう』
「ふん。べつに、いいだろ。あいつだって、オレのことが好きでインタビューしてるんじゃない。ただ、了さんが怖くてやってんだからさ。だから、どうせツクモには逆らえない。そんな奴にどんな態度取ったっていいじゃん」
その声が、なまじっか間違っていないから返答に困る。私は薄く笑いを浮かべて告げる。
『すみません。私にインタビュアーを選べる権利があれば、もう少しやる気のある方にお願い出来たのに』
「は?なんでアンタが謝るんだよ。意味分かんない。どうせ、さっきの奴にもそうやって謝ってばっかだったんだろ」
『…そうですね』
「あっそ。やっぱりオレ、あんたのこと嫌い」
ストレートな物言いに、私は苦笑を浮かべる。
彼らのことを理解したい。近付きたいと思うのに、現実はなかなかどうして上手くいかないものだ。