第94章 ほら、解決だろ
【side 十龍之介】
エリが八乙女プロダクションを去り、1週間ほどが経過しようとしていた。TRIGGERのスケジュール管理、付き人は姉鷺が引き受けてくれている。
エリが現れる前の、本来の姿に戻ったに過ぎない。しかし、やはり寂しさを感じてしまうのは俺だけではないようだ。
「龍。春人の奴は、元気してるのか?」
最近はこれが、楽の口癖になりつつある。
近くで佇む天も、言葉は発しないが やはり気になるのだろう。意識だけはこちらに向けているようだ。
俺は、昨日も一昨日も説明したのと同じ台詞を口にする。
「ここ3日くらい、俺もほとんど話が出来てないんだ。帰って来ない日もあるし、やっぱり大変なんだと思う」
「仕事の内容は?具体的に何をしてるのか、聞いてないの?」
「…そういうのは、特に言いたがらないから」
「なんだよ…まぁ、アイツらしいっちゃ アイツらしいか」
引きずってはいけないと、分かっているのに。どうしてもエリが近くにいないという現実を受け入れたがらない自分。
信じて送り出したはずなのに。見えない絆があると確信しているはずなのに。
どうしても公私共に彼女を求めてしまう自分は、なんと強欲なのだろう。
「あら。なに。お葬式みたいよ?この部屋」
席を外していた姉鷺が、楽屋へと戻って来た。開口一番で、そう吐き捨てた彼に、楽が問い掛ける。
「姉鷺は、アイツから何か聞いてねぇのか?」
「何かって?」
「たとえば…あっちでどんな仕事してるとか、元気でやってるとか」
「知らないわよ。大体、アンタ達にも話してないこと、アタシに言ってくるわけないじゃない」
そうか。と、楽は視線を伏せた。