第93章 選んだのは、こういう道だろ
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『ん…』
「こうやって、素直に甘えてくれるエリは、本当に可愛い」
『いつもは可愛くなくて、ごめんね?』
「あはは。いや、いつも可愛いんだけど。
こんなふうにキスをねだる君が見れるのは、俺だけなのかなって思ったら、余計に可愛く思えて」
『うん、龍だけ。だから、ね。もっとちょうだい』
「勿論。いくらでも」
啄ばむようなキスを、幾度となく与えられて。頬や瞼、額にも唇が落とされる。そして今度は、深い大人の口吻を貰う。頭の芯が揺れて、胸が苦しくなるようなキス。
『は…っ、んっ、ぁ』
「 ——ちゅ…、好きだよ」
『私も、好き。ごめ、んね…。さっき、言ってたこと…取り消すから』
「ん、そうしてもらえると、嬉しいな」
口付けの、合間合間に言葉を交わす。龍之介は、ちゅっと唇の横にキスを落とした。それを最後にして彼は立ち上がる。それから、私の体をふわりと抱き上げた。
その逞しい腕に抱かれながら、首の後ろに手を回す。ぎゅっと体をさらに密着させて、その首筋に唇を寄せた。お風呂上がりだからか、ふわりと石鹸の香りが鼻腔をくすぐる。
「ッ、エリ。ベットまで、我慢して?」
『ん…。でも私、お風呂入りたい』
「ごめん。それは、俺が我慢出来ないから却下かな」
龍之介は、はにかんで言った。やがて、私を丁寧に寝台に下ろす。それからすぐに、またキスの雨が降る。