第92章 これでも頑張ったんだよ?
男達が相談している隙に、私達もこそこそと密談を行う。
「…エリちゃん。大丈夫。君だけは、オレが絶対に助けるからね」
『馬鹿言わないで。助かる時は、一緒だから』
「オレはもう、真っ直ぐに走れるかどうかすら怪しいからなぁ。ちょっと厳しめかも」
『百、早まらないで。まだきっと、手は残ってる』
「まず右の男にタックルするでしょ。そんで次は左の男の足を蹴って横転させてやるんだ。で、そのまま奴のズボンの裾掴んで…」
『百…っ』
「大丈夫だよ。君がここから逃げ切るまで、絶対に離さないから。全速力で走るんだ。分かった?」
『待ってって言ってるでしょ』
「じゃあいくよ。3…2…」
『待っ』
ピンポーン。
部屋に、インターホンの音が鳴り響く。私と百は、顔を見合わせた。
「ッチ!今度は誰だ!」
「…千だ、Re:valeの千だ!」
そういえば彼もここへ向かっていたことを、すっかり失念していた。どうやら私は、本当に取り乱していたようだ。
『く…っ!どうして危険だと分かってるくせに、わざわざ訪ねて来るんでしょうね!』
「わぁ 春人ちゃん。そのギャグめちゃくちゃ面白いね!手錠されてなかったら、拍手を送ってたとこだよ」
ピンポーン。また、同じ音色が繰り返される。
「オレに出させて!大丈夫!今度こそ、ちゃんと追い返してみせるから!」
男達はしぶしぶ、モニターに百を向かわせる。
私がここへ来た際も、きっとこのやり取りが成されたに違いない。