第91章 相変わらずの強欲っぷりだな
「あーぁ。TRIGGERのライブは楽しみだけど、俺らもやりたかったなぁ。Whaleのこけら落とし。3人は、いいよなぁ」
「こら環?それはここでは言わない約束!アンケートの結果、お前も見たろ?そんだけTRIGGERは多くの人に望まれてんだ。
…でも…このでっけぇステージで歌ってみたかったなぁ!」
「ほら。みっきーもやっぱ思ってんじゃん」
「はっ!つい心の声が漏れ出ちまったぁ!」
三月と環の明るい声が、TRIGGERの雰囲気も明るくしてくれる。
TRIGGERと皆んなが楽しそうに歓談している中、私は少し離れた場所で資料とにらめっこしていた。
そんな私に、一織と大和が近付いてくる。
「邪魔、しない方が良い?」
『あ、いえ。大丈夫ですよ。忙しい中、皆さん揃っての激励に感謝を申し上げます』
「こちらこそ、ご招待いただきありがとうございます。見事こけら落としライブの権利を獲得されたこと、お祝い申し上げます」
「ちょ、硬い硬い!敬語キャラ2人揃ってるだけでも硬いのに、申し上げ合戦始めんなよ。お兄さんの肩が凝っちゃうでしょ」
敬語キャラ2人は、顔を見合わせ薄く笑う。すると大和は、言葉を続ける。
「それはまぁ、さて置いて…。お前さん達、何でそんなピリついてるわけ?」
『……』
「もしかして今日、何かが起きるんですか」
2人は、真剣な瞳をこちらに向ける。そんな視線を ふいと躱して、私は口元を歪める。
『何かが起きる?ふふ、当然でしょう。
TRIGGERが、この特大ホールのこけら落としを行うんですよ?それはもう、未だ嘗(かつ)てないほどのパフォーマンスを披露すること請け合いです』
「自慢かよ」
「訊くんじゃなかったです」
2人の視線は、じとっと湿ったものへと変わったのだった。