第90章 どうしても聞いてもらいたい話
「ごめん。俺がさっきの放送で、情けない姿見せたから気を使わせちゃったね。でも、大丈夫だよ。
約束、したじゃないか。君が女の子だって知った日、楽には秘密を貫こうって。だから」
こちらを安心させる為、龍之介は必死に笑顔を作ろうとする。私はそんな彼の前で背を屈め、そっと両手で頬を包む。
『あの時はあの時。大切なのは、今。
私は龍之介の恋人だから。大切な貴方が、辛い気持ちを抱えながら生きている事が耐えられないの。
ねぇ、教えて?龍の、本当の気持ち。本当は、どうしたい?』
「エリ…っ」
龍之介は、私の手をぎゅっと掴んだ。とても力強くて、少し痛いくらいに。
「俺は…。本当は、楽に言いたい。打ち明けたいって、思ってる。大事な仲間に秘密を持ち続けたまま笑うのは、本当は辛くて…すごく、しんどいよ…!」
『うん…うん。そうだよね。ごめん、当然だよね。優しい龍に、酷な事を無理強いしてた私は、本当に最低だ』
「っちが!そんなこと」
『話そうか、楽に』
「えっ」
龍之介は心底驚いた様子で、勢いよく顔を上向けた。ずっと黙ってくれていた天は、とても看過出来ないとばかりに口を開く。
「ちょっと待って!話すって、正気?」
「い、いいの…?え、本当に?」
何も、今すぐに打ち明けるというわけではない。TRIGGERはいま、トラブルの渦中にある。それが落ち着いてから。というタイミングが妥当だろう。時期的には、1年くらい後になるか。それとも、もっと先か。
だが “ ずっと隠しておかなくてはならない秘密 ” と “ もう少しの間だけの秘密 ” では、心持ちは格段に違うはずだ。
きっと、龍之介の心も軽くなるはず。
『うん。本当。楽に、話そう』
「!!」
龍之介は、嬉しそうに はっと息を飲んだ。