第90章 どうしても聞いてもらいたい話
「…これも、難しい問題だよね。
あの人は好きになっても良い人。この人は好きになっちゃ駄目な人。そうやって、恋する相手をあらかじめ分類するなんて出来ないし。気付いたら好きになってるパターンだって多いよね。だから、誰かを愛した自分を責めるのは良くないと思うな。恋愛って、素晴らしいものなんだから。
って、あはは。また未成年が出しゃばっちゃいました。すみません」
「天、良いこと言うじゃねぇか。恋人も、親友も失いたくない。何も間違っちゃいねぇよ。そんな簡単に壊れる関係なら、もうとっくに駄目になってるはずだ。だから、もっと信じても良いだろ。彼女も、親友も。あと、大好きな恋人が選んでくれた自分自身を」
どん。と胸を叩く楽を見て、天は目を閉じ薄く笑った。そんな中、龍之介が意を決したように口を開く。
「楽は…もし自分が、この親友の立場だったらどう思う?全てを、正直に打ち明けて欲しいと感じるか?」
「そうだな。まぁ出来ることなら、話して欲しいと思う」
「知らなければ良かった。なんて事実を聞かされるとしても?より辛い現実なら、敢えて聞く必要がない時もあるんじゃない?」
「天の言う事も、分からなくもないけどな。でもそれでも俺は、知りたいと思うよ。
自分の知らないところで、2人が付き合ってた事実よりも。自分の知らないところで、2人が秘密を持ってた。って方が、俺ならキツイ」
そうか。と、苦々しく呟いた龍之介。楽は、そんな彼を不思議そうに見つめた。
そこで、天が回答を器用にまとめる。そうして生放送のラジオ番組は、幕を閉じた。
表向きは、何の問題もなく無事に…