第88章 合言葉をはいどうぞ!
「では、私はこれで失礼しますね」
『待って下さい。まだ私の方は、有意義な話を何も聞けていませんよ』
「それは、御堂さんが勝手に仰っていただけでしょう?」
『まぁそう言わず。もし答えられるなら、答えて下さい。
どうして月雲社長は、貴方達2人に私の秘密を全て話したのでしょう』
了みたいな男が、切り札ともいえる重要な情報を、容易く他人に話すのは違和感があった。また、どうして虎於と巳波とは情報を共有し、トウマと悠には黙っているのか。
「あんたの心を折る為、だったりしてな」
『え?』
「私も、虎於さんの見解と同意見です。
あの方は、サディストでサイコパスです。きっと、あなたが他人に虐められている姿を見ていたいんじゃないですか?
そして私達が、その配役に選ばれた」
『なるほど。凄く納得出来る答えを、どうもありがとうございます』
「狗丸さんと亥清さんは、悪ぶっていらっしゃいますが根はピュアですから。いじめっ子には向かないとの判断なのでしょう」
「はは。言えてる」
心底楽しそうに笑う2人を見ていたら、忘れていた怒りがふつふつと再燃した。
『歪んでいるのは、月雲社長だけじゃないようですね。お邪魔しました。さようなら』
「おい待てよ。次は俺の番だろう?」
『以前も言ったはずです。私が欲しいのなら、取引でと』
【81章 1934ページ】
「俺も取引は嫌いじゃない。ほら、言ってみろよ。あんたは、この俺に何を望む?」
『TRIGGERにとって、有益な情報か言動。貴方にそれが、提供出来ればの話ですけどね』
どちらの顔も見たくなくて、私は2人に背を向ける。そして挨拶の言葉を交わすのもそこそこに、今度こそツクモプロダクションを後にした。
「おかしいな…あいつ、絶対に俺のこと好きだと思うんだが」
「あなた、絶望的に人の気持ちが分からないんですね。お可哀想に」
「俺の本気の誘いに乗って来ない女なんて、この世にいないんだよ」
「そもそも彼女は、了さんが欲しがってる人ですよ。火遊びもほどほどにしておいては?」
「適度に虐めてやれとは言われたが、本気で口説くなとは言われてない。まぁ、言われてたとしても俺はやりたいようにやるけどな」
「はぁ。どうぞ ご勝手に。私には関係も、まして興味もありませんから」