第83章 う〜〜ん、むにゃ…
おまけ
●まだ見ぬ恩人
トウマ「……っ、頭が…割れ、る」
今世紀最大級の頭痛に見舞われながらも、なんとか鉛のような体をもたげた。それから辺りを見渡して、固まる。ここは一体どこだろう。自室でも、知り合いの部屋でもない、ここは…
強烈な喉の渇きを覚え、ほとんど無意識でテーブルの上の飲み物に手を伸ばす。全部 飲み干してから思い至った。
この飲み物は、どこから?それに横に置かれた頭痛薬。少しずつ冷静になってきて、昨夜の記憶が断片的に蘇る。
「そうだ俺…たしか、置いてかれて…」
誰かが、介抱してくれた。優しく俺の名を呼んだ。背中をさすってくれて、あと。
指を、口の中に突っ込んで…
「あれは…誰だったんだっけ」
さらに落ち着いて考えると、ここがホテルだという事が理解出来た。身体を引きずってロビーへと向かう。カウンターで、俺をここに連れて来た人物について問うてみた。
「お客様をお連れになった方は、女性の方でしたが」
「女…?あの、教えてもらえないすか?書いてますよね、チェックインの時に、名前とか…電話番号とか!」
そう言うと、受付の人間は怪しむような目をこちらに向けた。そんな視線に耐えきれなくなった俺は、あー やっぱいいです…。と要求を引っ込めた。
その日の夜、俺が潰れたバーに向かった。多分、ここが昨夜 “奴” と最後に飲んだ店だ。運良くマスターと話が出来たので、俺はまだ見ぬ恩人について質問する。
「さぁ?兄ちゃん知らないのかい?知り合いだとか言ってたが。いやぁそれにしても、綺麗な子だったなぁ」
名前や所在を、マスターが知っているはずもなく。結局 俺は何の情報も得られぬまま、その場を後にした。
「…誰だ。俺を助けたお前は一体、誰なんだよ」