第82章 TRIGGERを独り占めだね
「 —— い。 お —— ぃ」
『っ!!』
「お〜〜ぃ!
やーっと起きたなぁ。あんたら、こんなとこで寝とったら危ないって」
私達は、見知らぬ人間の声を受けて、飛び跳ねるように体を起こす。
と いうか、人…?この無人島に、人がいたのか!!
驚いて声も出せない私達に、男は引き続き語り掛ける。
「あんたら、無人島ツアーに来た人かい?てーっきり全員、帰ったもんだと思ってたんだが」
「あ…えっと、すみません、その…無人島ツアーっていうのは?」
「んん?
都会の人が、船やら飛行機やらで 無人島に見立てたこの島に来て、遭難気分を味わうってツアーだけんど」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。じゃあ、もしかしなくても この島は…」
「無人島じゃねぇよ?」
ケロっと言い放つ御仁。
私達が、無人島ハイから解放された瞬間であった。
「ところでー…あんたら、もしかして有名な人かい?なーんとなく見覚えがあるんだが…」
「気のせいです。それは、あなたの気のせいですよ。絶対に」
天がスーパースマイルで説き伏せた。
さらに詳しい話を聞いていく。
どうやら、この島には頻繁に観光客が訪れるらしい。私達が拠点にした反対側の土地には、船着場や小型飛行機の飛行場まで完備しているとのことだ。
そしてこの島に降り立った観光客は、無人島っぽく整備された無人島ではないこの島で、非日常の時間を楽しむのだとか…。
管理人だという この男に、龍之介が打診する。
「あの…無人島だという体でしたら、無人島って書かれた看板は どうかと思います…」
「お前が1番言いたいところはそこなのか?龍」
「プロデューサー、大丈夫?」
青い顔をする私の背に、天がそっと手を添える。震える声を抑え付けて、私は言葉を紡ぐ。
『…で…わ、を』
「んん?なんだって?」
『どうか電話を…お貸し下さい』
差し出した私の両手の平の上に、管理人はポトリとスマホを落とすのだった。
番号を暗記している八乙女プロに電話。大混乱のスタッフ達や社長に事の全てを説明。そして、即座にチャーターした小型機で空へ飛び立った。
この間に要した時間は、約15分ほどであった…