第82章 TRIGGERを独り占めだね
シャッ!っと、何かが滑る音がする。途端に辺りが明るくなったので、それがカーテンの開け放たれる音だったと理解した。
うぅ…。とか、あぁ…。とかの呻き声が、すぐ近くから聞こえてきた。かく言う私も、そんな呻きをあげた内の1人だ。
良い歳をして、ろくにベットにも入らず眠りこけていた、情け無い大人達。そんな私達を見下すのは、天使みたいに綺麗な顔をした悪魔のように恐ろしい青年。
「いい加減にして」
「う…天…頼む。あと 5分でいい、寝かせてくれ」
「っ、頭が…痛い…っ」
『眩しい…眠い…寝たい…』
「今すぐに起きるか、ボクの手で永遠の眠りに就かされるか、どっちがいい?」
床に転がっていた3人は、揃って飛ぶようにして立ち上がった。
「あと5分で支度出来そうな気分だぜ!」
「頭なんて全く痛くない!」
『眩しくない、眠たくない、寝たくない!』
「ふふ。やれば出来るじゃない」
天は、ふわりと微笑んだ。しかしそれも一瞬で、すぐにまた目付きが鋭くなる。
「その様子じゃ、頭もばっちり起きたことだろうから。その覚醒した脳みそでよく考えて。
キミ達がまず、最優先でしなくちゃいけないことは何?」
「まず、すること。そうだな…
……朝飯を食う?」
「うーん。でも俺、ちょっとまだ食欲はないかな…」
『でも、ホテルの朝食って美味しいですよね』
「ボクの部屋から出て行くことに決まってるでしょ!」
私達は、天に追い出されるようにして部屋を飛び出した。
「あいつ…あんな見た目してるくせに、怒るとめちゃくちゃ怖ぇよな」
「二日酔いも恐れをなして引っ込んじゃうくらいにね」
『まぁ、私達も昨日はちょっと調子に乗り過ぎましたか…』
広い廊下。私達は天の部屋のドアを見つめ、溜息を吐いた。