第10章 脳みそ溶けるかと思ったぐらいなんだから!
「あーもー!エリちゃん大好き!超可愛いっ、スキー!」
自分の腕の中にいる彼女を、ぎゅっと力任せに抱き締める。
柔らかくて、良い匂いがして。なんだかオレの中で、エリを愛おしいと思う気持ちが増していく気がする。
『それにしても、脳みそ溶けるって表現は…なんだか可笑しい。ふふ。やっぱり感情表現が豊かだ、モモは』
ずっと彼女の髪を撫でつけていると、エリが言った。
それにしても…いつものように敬語ではなく。表情だった柔らかい。もしかすると、これが彼女の “ 素 ” なのだろうか。
いや、これがオレの希望だと悟ったエリが演技しているだけに過ぎないのだろうか?どっちだ、これは…
『モモ?な、なに?じっと見て…』
初めてエリに会った時は、オレは男だと思って疑いすらしていなかった。(千はバッチリ気付いてたけど)
最初に抱いた印象といえば、あぁ TRIGGERのプロデューサーか。無駄に顔がいいな。いかにも敏腕って感じで仕事出来そう。みたいな!
でも少し話しをしたら、少しずつ興味が湧いてきた。クール過ぎるエリのこの表情、オレが崩してみたい!って思った。要は、あれ。
“ 攻略したい! ” って思っちゃったわけ。
それが今では…信じられないぐらい夢中になってる。
現に今も、こんなふうに ずーーっと彼女の事で頭が占拠されてるし。見事にギャップにやられて、もっと色んなエリが見たい!って感じてる。セックスの時だって、自制心ぶっ壊れて超独りよがりなプレイしちゃったし…。
とにかく、こんな事は初めてだった。
「ねぇ、エリちゃん。オレの…」
“ オレの恋人になってくれない? ” って言おうとして。
「…やっぱりやめた!」
だって多分、オレがそれを言っちゃったら 君はもうオレと会わないでしょう?
追ってくる者からは全力で去る。きっと彼女は、そんな人だ。
今のエリの中には、TRIGGERをトップアイドルにする使命感しかない。きっと、それ以外は全部 ただの邪魔でしかないと思うから。
「…今は、言うのやめておくね…。だから、またオレと会う時間を頂戴?」
とりあえず今は、伝える言葉はこれくらいに。
この続きは…TRIGGERが、もっと上に行ってから。
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