第76章 知らず知らずの内に、同じ女に惚れていたんだな
定刻となったのと同時に、大量のスモークが焚かれる。ステージ中央に設置された巨大モニターに、MAKAの映像が映し出された。
ほんの一瞬、チカチカっと照明が激しく点滅。その隙に、本物のMAKAがステージの上に現れた!
まるで、映像の彼女がスクリーンから飛び出して来たようだ。
クールな舞台演出に、私の心はがっつりと囚われる。
そして。何の挨拶を挟むことなく、激しい音楽に合わせて彼女は踊り出す。なんともスピーディな展開。掴みはバッチリだ。
一曲終わると、マイクを手にしたMAKAの、元気な声がドームに響いた。
《 ハーイ!!皆んな!お待たせー!
皆んなのMAKAが、ついに、The Forumにー…
キターーーー! 》
彼女は拳を突き上げながら、溌剌(ハツラツ)とした挨拶をぶっ込む。すると場内全員が Yeahhhーー!!と叫び応える。
その咆哮に、Forumがビリビリと震えた。
「うぉ…すげぇな」
楽の呟きは聞き取れないが。今の状況を鑑みると、どのような言葉を口にしたかは想像が付く。私はこくりと頷いた。
《 皆んな、ごめんね!
きっとこのステージが終わる事には、声とか出なくなっちゃって、明日は筋肉痛で体がバッキバキになっちゃってると思うけど…
手加減するつもりはないから、しっかり私について来て! 》
流暢な英語で語られたのは、これから始まるライブが最高のものになると予感させられる挨拶。
100%、英語を理解出来たわけではないが、まぁ8割くらいの意味は拾い上げられる。きっと、楽も私と同程度の理解はしているだろう。
《 さぁ!時間がもったいないから、ガンガン行くよー!
でも、その前に… サプラーーイズ!
なんと、とんでもないスペシャルゲストに来て貰ってるんだ!皆んなにも紹介するね! 》
私と楽は、顔を見合わせた。