第75章 俺に、思い出をくれないか
「 はじめて君が、笑顔くれた日を思い出す
それはまるで、昨日の事のよう
翼なしで飛べるかも
そんな気持ちは初めてで
もしも僕が あの時に
勇気を持って電話をかけられてたら
今も君の隣で笑っていたのは
知らない誰かなんかじゃなくて
この僕だったのかな
怖いものなんて、何もなかった
ふたりで歩いたあの頃は
でもこれから僕らは
同じ空の下、違う大人になるのだろう
目を塞いだって、やってくる望まぬ未来
いつか僕の知らない場所
知らない誰かに出会っても
あの日の僕を 君を 忘れないで
思い出して
ふたりで歩けば、何も怖いものなど
なかったあの頃を
これからの長い月日と共に
僕らが 離れてしまったとしても
繋いだ手の優しさを
忘れずにいるよ
君と出会えた奇跡
この胸に抱いて歩いて行こう」
俺の声と、彼女の音がピタリと重なって。
万理が贈ったメッセージが完成した。
たまたま、ひとつの恋の終わりに立ち会った俺なんかが。代わりを務められたとは思わないけれど。
同じ女性を想う男として、少しでも役に立てたなら嬉しい。
愛情を寄せた人間と、それに応えられなかった人間と。
その2人ともが、いつか…
心の底から、幸せだと感じさせてくれる人に出会えますよう。
そう切実に願いながら、このラブソングを 歌い上げた。
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