第10章 脳みそ溶けるかと思ったぐらいなんだから!
翌日の朝。
『なんですか、目の下のそれは!』
私の前に姿を現した龍之介の目の下には、ハッキリと自己主張している くまがあった。
「…くま」
ケロっと言ってのける天。
「熊」
真顔で言ってのける楽。
「ガ、ガオー。なんちゃって…。はは」
明らかに無理をして明るく振る舞う龍之介。なんだかもう開いた口が塞がらない。
そもそも、こんなイケメンな獣がいてたまるか。
『今日、撮影だって言いましたよね』
「ごめん。でも、どうしても眠れなくて…」
シュンとしょげる大男。こんなふうに素直に謝られては、もうこれ以上何も言う事が出来ない。
私は、ホットアイピローと水で冷やしたタオルを用意してから ソファの端に座る。
『出立する前に、そのくま 少しはマシにしておきましょう。ここに頭乗せて下さい』
「えっと…、はい」
龍之介は一瞬躊躇したが、存外素直に膝に頭を預けてくれた。長身の彼が寝転がると、足の膝から下はソファの外に投げ出された。
「…男が男に膝枕とか、なかなかゾッとしねぇな」
「そうだね」
天は 楽の嫌味に答えながら、この客室の鍵を閉めた。たしかに、もし来客があって こんな光景を目の当たりにしてしまえば 卒倒するかもしれない。賢明な判断だ。
龍之介の目の上にアイピローを乗せ、まずは温める。じんわりと温まったら、次はタオルを乗せて その上から軽く指圧してマッサージをする。
「…きもちい…」
龍之介の口から 柔らかい声が漏れる。
「そんなんで本当に くまがとれるの?」
『とれたり とれなかったりです』
「なんだそりゃ」