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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第72章 綺麗じゃない愛だって構わない




【side 十龍之介】


「………」


眠りに着く前。彼女は俺に、謝罪した。
理由は、俺の背中にエリが刻んだ爪痕だった。

“ アイドルの身体に傷を付けるなんて ありえない。しかも 私は貴方に、跡を残すなと言ったのに。私の方がやらかしてしまうなんて ”

そう言って、苦笑いを浮かべた。


俺は、暖炉の温かい光にゆらゆらと照らされる君の寝顔を見つめ、思う。

エリの残してくれたこの爪痕が、永遠に消えなければ良い。なんて。そう、願ってしまう。


「…エリ、俺は…」


一糸纏わぬ姿で、すやすやと寝息を立てるエリを抱き締める。


「俺は、君の事が…」


俺の中の獣は、やっぱり臆病者みたいだ。

眠っている君にでさえも、肝心な言葉を伝えられないのだから。

好きだって、愛してるって。そう言ってしまえれば、どれほどの幸福で満たされることだろう。


…彼女は、何もかも忘れてしまうつもりなのだろうか。
2人見つめ合って、愛し合った 今夜のことを。

俺に、忘れる事は出来るのだろうか。
君と愛し合った 奇跡みたいな今夜のことを。

いつの間に、こんなにも欲張りになってしまったのだろう。俺のこの想いに、触って欲しいと思うなんて。

綺麗じゃない愛だって構わない。そう告げたのは、俺の方なのに。


でもどうか、抱き締めさせて。朝が来るまでは。
俺だけの君だって、思わせて。今だけは。

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