第72章 綺麗じゃない愛だって構わない
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私は、もう言葉を紡ぐ余裕もなくなって。ただ、こくんと頷いた。
生まれたままの姿で、私達は ただ互いを求めている。
熱い息を吐き出しながら、龍之介はゆっくりと 自身を私の中に押し進めていく。
先端の括れまでを飲み込んだところで、私は強い快感と圧迫感から、顔を大きく横へ背けた。
『あぁっ…!んんっ、龍っ、龍!』
「は…、はぁっ…くッ」
私の顔の横に両手を突いた彼は、真上から私を見下ろした。
まだ乾いてなかったのであろう 雪解け水が、龍之介の髪から一雫。ぽたりと、私の目元へと落水した。
すぐに彼の顔が近づいて来て、そこへ唇を落とし舐め取る。それと同時に、腰はさらに押し進められた。
『ひぅっ、んんー…あぁっ』
「っ…エリ…!」
いつもの優しい彼ならば、大丈夫?君が辛いならここでやめようか?
そんな言葉を口にするのだろう。
しかし、今の龍之介は違った。私は、それが嬉しかった。
余裕なんて、全部失ってしまえばいい。
我慢なんて、する必要はない。
ほんの少しだって、欲望を抑える事なく、我儘に、ただ求めればいい。
私が常々、龍之介に求めていた姿が ここにはあったから。
「…っ、本当に…夢みたいだ。こんなふうに 乱れている君を、見られる日が来るなんて…っ」
『ん…っ、しかも、龍の腕の中で…?』
「うん。っはぁ…、もう…明日 死んでもいい」
龍之介は、自分のモノが全て収まった私の下腹を、愛おしそうに優しく撫でた。