第71章 ピュイっ!
真冬と呼ぶには少し遅く、春先と言い切るには まだ少し早い。そんな曖昧な季節。
私がいまTRIGGERの3人といる この場所は、東北地方のとある高原だ。
そこに、ひっそりと佇む厩舎。ここが、今日の撮影地となる。
「やっぱりこっちの方は、雪が残ってるんだな」
「どこを見渡しても、真っ白で綺麗」
「本当だね。こんな綺麗な雪景色は、なかなか見られな……へっくしゅ!」
『龍、大丈夫ですか?』
沖縄出身の彼は、寒さに一際 弱い。真冬ではないにしろ、やはり東北というだけあって かなり寒い。
くしゃみをした龍之介にカイロを手渡すと、彼は赤い鼻をして大丈夫と笑った。
ここへ出向いた目的は、ポスター用の写真を撮影する為。
わざわざ厩舎に足を運んだのだ。勿論、馬に乗る。
さらには、この雪景色。観光客の来ない過疎地。この白銀の世界には、ただの1つも足跡などで汚れていない。
こんな素晴らしいロケーションとコンディションの中で作るポスターが、駄作になどなるはずがない。
「ようこんな遠い所まで、はるばる来なすったなぁ」
『こんにちは。今日はよろしくお願いします』
TRIGGERメンバーが衣装に着替えている最中、私はこの厩舎の主人と挨拶を交わす。
「いやぁ晴れて良かった。こっちは曇りの日が多いからねぇ」
『今時期は、もう吹雪いたりはしないのですか?』
「滅多にないなぁ。どか降りするんは、1年通しても何回かだけ。寒さは相変わらず えらいけんどね」
勝手なイメージで、東北であればこの時期も頻繁に吹雪くものだと思っていた。
しかし、そうでもないらしい。現に、今の積雪量も数センチほどだ。
とにかく、撮影の環境としては抜群である。