第9章 抱いて差し上げましょうか?
私は出版社を飛び出すと、すぐさまバイクに飛び乗って八乙女事務所へととんぼ返り。
あの狸男は、記事の女性の事を “ あのモデル ” と言った。
女性とは、何の繋がりもない。そう言っていたにも関わらず、だ。彼女をモデルだと認識している事。それこそが、あの男と女性が繋がっている証拠だ。
私は事務所へ戻ると、手の空いている事務員に手助けを求めた。MONDAYを広げて、指示を投げる。
『この女性が、モデルだという事が判明しました。なんとかして 彼女を特定したいので、どうかお手伝い下さい。
彼女が特徴的なのは、この口元のホクロ。同じ場所にホクロのあるモデルを、タレント名鑑からピックアップお願いします』
突然舞い込んだスキャンダルに、意気消沈ムードだった事務所内の空気が 少しだけ上向く。
私も皆んなと同じ作業を、与えられている自室にて取り掛かる。
出版社に乗り込んで、駄目だった以上…。あとはこの女性に直接会って、道を切り開く他無い。
女性と出版社がグルで、龍之介をハメたと自供させる。それしか方法は無いだろう。
それにはまず、この女性がどこの誰なのかを突き止めなければ。
カチャカチャと、パソコンに向かう。そうやって何時間経過したのだろうか。
やがて、TRIGGERのメンバーがノックもなしに部屋に雪崩れ込んでくる。
「おい春人、出版社どうだっ……なんだお前その格好」
「うわ。きったな」
「春人くんが…俺のせいでおかしくなっちゃった」
私のヤンキー具合を見た3人は、思い思いの感想を口走ってくれる。