第69章 お前さんのデート相手はここで待ってますよー
仕事部屋のデスクに着き、マウスを操作する私を神妙な面持ちで見つめるTRIGGERメンバー。
私は目的の画面へと進み、カーソルをボタンに合わせてダブルクリックする。
『………』
「俺だけ落ちてたらどうしよう…」
「不吉な事言うな、龍」
「…どうなの。プロデューサー」
ローディングが終わり、文面が表示される。早速そこにある文言を読み、彼らに答えを告げる。
『3人とも、最終審査へと進んでいます』
「…っ、よっしゃぁ!!」
「残…った。やった!!」
「良かった…。3人で、最終選考に挑める!」
まるで、入学試験に受かった大学生のようだ。とにかく3人は、全身を使って喜びを表現した。
私は、再度モニターに映った文字を読み返し ほっと胸をなで下ろす。
彼らは現在、あるミュージカルの出演枠を獲得する為オーディションを受けている。
いつも以上に力が入っている3人。それもそうだろう。そのミュージカルは、ただのミュージカルではない。
かつての大俳優、千葉 志津雄。彼が主演を務めた、名作 “ 三日月狼 ” 。
それをリメイクしたミュージカル “ クレセント・ウルフ ” の、出演枠を獲得するべく動いているのだから。
たったいま最終選考まで進めると確定したわけだが、このオーディションがクレセントウルフの為のものであると知ったのは、ごくごく最近だ。
事の始まりは、姉鷺の一言だった。
“ 裏で、大きな金が動く気配がする ” そう言って、このオーディションをTRIGGERに勧めたのだ。
彼と私が調べを進めれば進めるほど、その予感はより大きなものとなった。
もしこの案件を獲得出来れば、TRIGGERをTRIGGERたらしめるような作品になるに違いない。
オーディションを受けない手はなかった。
そして、最近ようやく先方から発表があったのだ。
画策されているのは…
あの、三日月狼のリメイクであると。