第68章 あなた…意外と馬鹿なんですね
『ルールブックを読んだだけでは、やはり分からないものですね…。まさか、サッカーとやらが…
いかに審判の目を上手く盗み、相手を1人ずつ確実に潰していくか。というスポーツだったとは』
「違うよ!?」
「違うぞ!?」
「うぅ…俺が知ってるフットサルじゃない…」
むくりと体を起こし、額に手をやる。かなり傷んだが、どうやら血は出ていないらしい。
しかし3人は、わっと叫んだ。
「おい春人!お前、鼻血出てるって!」
「うわぁ!ティ、ティッシュティッシュ!」
「春人くん、平気か?辛いなら、もう無理しなくていい。後は俺達に任せて、下がっててもいいんだよ」
『治療の為に、少しだけ下がりますけど…すぐに戻ります。その間は4人になってしまいますが、よろしくお願いします』
ベンチへ歩き出した私の背中に、百が叫ぶ。
「春人ちゃーん!もし頭の傷、跡が残っちゃったらオレがお嫁さんにもらってあげるからね!!
ってか もらわせて下さい!」
「ちょっとちょっと百さん!公然でプロポーズ叫ぶのやめて下さいよ!!」
「春人くん…本当に、大丈夫かな。
あの子のあの顔は……やばい気がする」
審判が追いかけて来て、鼻血が止まればプレーに戻れる旨を説明した。
その際、さきほど何が起こったのか経緯を聞かれたが、私は本当の事を隠した。
私は1人で転んでしまった。そして男が駆け出したところに、たまたま私の顔があっただけだ。
そう、答えた。
あちらがそういう手段を選んだのなら。私も、同じ土俵に上がってやろうではないか。