第68章 あなた…意外と馬鹿なんですね

「ぎゃはは！ダッセぇ！素人に抜かれてんじゃねぇよ！」

「…ッチ、うっせぇな。ちょっと油断しただけだ。もう抜かせねぇよ」


男の言い訳も虚しく、勢いに乗った私は、その後も彼からボールを奪い続けた。
偶然は、こう何度も続かないものだ。私は完全に、ボールカットというものを自分の物にした。

赤チームと青チームの点差が、ついに10点まで開いたとき。タイムアウトの要求がなされた。申請したのは、当然 向こうである。


「「「「『イエーーーイ！』」」」」

「完全に調子に乗ってますね…」


景気良くハイタッチを決める赤チーム5人。それを一織が呆れた目で見つめていた。
私はそんな彼に、両手を上げてジリジリ近付く。


『一織さんも、恥ずかしがらずに』

「恥ずかしがっているわけじゃありません！」


遠慮がちに上がった一織の手に、自分の手の平を合わせる。


「それにしても春人だよ！すげぇな！オレ、あんたからパスが来た時はマジでビビったわ！」

『パスではなく、闇雲に蹴っただけですけどね』

「それでも凄いよ！もしかして春人ちゃん、サッカーの才能あるのかも！」

『ふふ、脚が人より少し器用なだけですよ』

「脚が器用ってなんですか…どう見ても、あれは観察能力の高さが起因し」

「春人くんも運動部に入っちゃえばいいじゃないか！」

「おお！龍それグッアイディーア！春人ちゃんなら大歓迎だよ！

『ど、どうしましょう…』迷う

「満更でもない顔、しないで下さい…。キャラ崩壊が尋常じゃないですよ」