第67章 左手は添えるだけ

『龍は、私と一緒にフットサルしたくないですか？』

「そんな事ないよ！でも」

『私は、したかったですよ。皆さんの楽しそうなプレーを見ていて、いいなと思っていたんです。
実はずっと…羨ましかったんです』

「そ…そうだったのか！ごめんね春人くん…俺、そんな君の気持ちに全然気付かなくて！」

『いいんです。子供達の為にも この勝負、絶対に勝ちましょうね』

「うん！一緒に頑張ろう！」


私達は、満面の笑みで握手を交わした。その様子を、近くから見ている3人。


「うーん、相変わらず見事な春人ちゃんの手腕！」

「いえ…あれは彼の手腕がどうと言うより、十さんがチョロ過ぎるのでは？」

「まぁ、最近のTRIGGERじゃ見慣れた光景だよな」


話がまとまったところで、最後の人選に移る。
フィールドには、既に相手チームが揃い立っていた。そして景気の悪い顔で、今か今かと試合の開始を待っている。気の短い彼らは、たまに野次なども飛ばして来ていた。こちらも選出を急がねばなるまい。


「百さん。残りのメンバーは運動部から選ぶ他ないと思います。
そこでお伺いしたいのですが、この中で1番…」

「あぁえっと、この中で1番 上手いのはね！」

「違います。私が訊きたいのは、この中で1番」

「『権力がないのは誰ですか？』」

「声揃えて何てこと訊いてくるんだよう！！」


百が声を荒げたくなる気持ちは分かるが、仕方がないではないか。
万が一にも、業界の宝に怪我をさせる訳にはいかない。
この中から誰かを選ばなければならないというなら、なるべく後に影響しない人がいい。

居ないか？ただのADとか、デビューしたてのアイドルとか…