第67章 左手は添えるだけ
『さて、こちらのメンバーですが…』
「百さんに、十さん。それに兄さんは確定として、あと2人ですね」
輪になってメンバー選出について話し合う、私を含めた5人。その周りには、少年達。そして、まだ帰路に着いていない運動部の面子が成り行きを見守っていた。
そんな中、百が口を開く。
「一織は確定でしょ!」
「私ですか…。フットサルは、体育の授業で少し経験した程度なので不安が残りますが。まぁ、この場合仕方ないでしょうね」
『いえ。今回、一織さんは5人の中に含めない方向で行こうと思います』
「ありがたいですが…不参加で良いんですか?」
『誰も不参加とは言っていないでしょう。貴方だけ楽しようとしないで下さい。道連れに決まってるじゃないですか』
一織の顔が、一瞬だけ嬉しそうに光るのを見逃さなかった。道連れと言われた彼は、再度 諦めたように溜息を吐いた。
『一織さんには、1番重要なポジションを担ってもらいます』
「あ。オレ分かった!1番重要なポジション…それすなわち、監督だろ!」
『三月さん、正解です』
私は少し声のトーンを上げて、周りにいる重鎮達にも聞こえるように説明する。
『一織さんは、広い視野を持って状況を冷静に判断出来る。その力は、間違いなくチームが勝てる確率を引き上げるでしょう。
貴方はその目を持ってして、プレイを遠目から分析して下さい。そして、相手チームの弱点や、優良な作戦を見出して欲しいのです。
信用していますよ』
「すげぇな一織。お前、春人にめちゃくちゃ信頼されてんじゃん!
分かってると思うけど、オレも信頼してるからな!」
「春人くんの言う通り、一織くんなら それが出来るよ。よろしくな、監督!」
「うん!頼んだ一織!チームを勝利に導いてね。オレ達も頑張っちゃうから!」
「……どこまで出来るかは分かりませんが、尽力します」
期待の声を一身に受けた一織は、照れと戸惑いを隠すように 顔の前に腕をやって言った。