第62章 俺は君にとって、ただの都合の良い男だったのか!
しつこいようだが、今日は贅沢に。という事で、ビールも缶ではなく瓶。中身をキンキンに冷えたグラスに注ぐ。天はリンゴジュースで乾杯だ。
『それでは、リーダー。乾杯の音頭を』
「俺かよ…」
「うん!間違いなくここは楽の出番だよ!よっ、リーダー!」
「頑張れリーダー」
全員に囃し立てられ、困惑気味だったのは一瞬。楽はすぐにグラスを右手に構えた。こういう時に、ぱっと覚悟を決められる楽はやっぱり格好良いと思う。
「春人。お前と俺達が出会って、今日で2年だ。正直初めの頃は、なんでこんな女男がプロデューサーなんだって思った」
『え、このタイミングで悪口…』
「でも、今ではすげぇ感謝してる。それは、俺だけじゃなくて こいつらも同じ気持ちだ」
楽の言葉を受けて、エリはグラスを掲げたまま俺と天に視線をやった。
不安そうな彼女を見ながら、俺達は頷く。すると、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「俺達に出会ってくれてありがとうな。この2年間も、世話になった。それで、これからもTRIGGERをよろしく頼むぜ。俺達と一緒に、もっと上へ駆け上がっ」
「長い。乾杯」
『かんぱーい』
「なっっ!お、おい!!そりゃねぇだろ!」
「あっはは!かんぱーい!」
まさかの、最後まで挨拶をさせてもらえないという事態。楽は驚きのあまり立ち上がって、抗議する。
しかしそんな彼など、なんのその。天とエリは既に飲み物に口を付けていた。
そんな様子が可笑しくて、俺も高笑いをしながら便乗させてもらう。
「長らく待たされた後のりんごジュースは格別に美味しい」
『長らく待たされた後のビールだって格別に美味しいですよ』
「そうかそうか、お前らはどうしても俺をいじられキャラにしてぇんだな…!」
天とエリの、息が合った掛け合い。いつから2人は、こんなにも通じ合ったコンビになっていただろうか。
いや…。今や、彼女と呼応共振しているのは天だけではない。俺や楽も、同じ様な間柄だ。
こんな関係性を築けたのも、きっと俺達が4人で様々な困難を乗り越えて来たからだろう。勿論、この道のりは困難だけではなかった。
数え切れない喜びも、分かち合って来た。
それらがあったから、今の俺達がある。そう考えると、この2年間が、より愛しい物に感じられるのだった。