第60章 面倒な男に惚れられたと思って、諦めてくれ
楽は、Lioの事を忘れたわけではないと思う。しかし、そのLioと同じくらい、エリの事も好きになったのだろう。
どちらも、私だとは知らないまま。その事実が、嬉しくもあり悲しくもある。彼の気持ちに、応える事は出来ないけれど。
その想いを、確かに私は受け取った。
私はもう、楽に “ ありがとう ” とさえ言う事は叶わないけれど。貴方の想いはしっかりと、この胸にしまっておくから。
『……ありがとう』
この呟きは、静かに部屋に溶けていった。
しばらくただ呆然とベットに転がっていた。携帯の通知音で、ようやく時間が動き出す。
画面を確認すると、すぐに何の通知だったのか理解出来た。
楽が、ラビッターを更新したのだ。ソライロタワーに登った感想を投稿したのだろう。
私はすぐに楽の呟きを表示する。
《 明日からソライロタワーで、Wonder Wonder Landとのコラボが開催されるぜ!一足先に楽しんで来た。色んなキャラがいて、いつもとは違う雰囲気で すげぇ楽しかった! 》
自然と頬が緩む。さっきまで一緒にいた彼との、楽しかった時間が思い起こされた。
呟きは瞬く間に拡散され、いいねの数も見る見る内に増えて行く。
そこへ、さらに文章が追記される。
《 夜景も、めちゃくちゃ綺麗だったよ。夢みたいな時間だった。タワーに登る全員が、俺みたいに幸せな時間を過ごせたらいいなって。そう思う》
『……そっか、幸せな時間を 過ごせたのか。良かった…良かったよ、楽…』
楽が、こんな私といる事で 少しでもそう感じてくれていたなら、嬉しい。幸せを感じてくれていたなら、私も 嬉しい。