第60章 面倒な男に惚れられたと思って、諦めてくれ
八乙女楽主演のこの映画。王道の恋愛モノとなっていて、一言でいえばズバリ “ 禁断の恋 ” の物語だ。
とある大企業の次期社長が確約された男。この役を楽が演じる。恵まれた容姿、約束された社長の椅子。誰もが彼を羨んだ。
そんな男が 恋に落ちたのは、何の変哲もない、レストランの女性ウェイトレスだった。
2人は、それが運命であったかのように惹かれ合い、恋に落ちた。しかし 男の周りにいる人間達は総じて、2人の交際に猛反対だった。男も女も、自分達の身分の違いが原因だと思い込んでいた。
『………』
(でも話は…そう単純じゃなかった)
《 いい加減にしろ。俺は、あんたの駒じゃない。自分の会社をデカくする為に、俺を利用するなよ!
用意された許嫁と一緒になる気はない。俺には、心から愛してる人がいる 》
《 ……駄目だ。お前に似合う相手は、必ず私が見つけてくる。彼女の事は、諦めろ 》
《 …っ、あんたは、何も分かってない!親のくせに…っ、どうして俺の幸せを願ってくれない!》
《 願っているからこそだ!何も分かっていないのは、お前の方なんだよ!》
《 どういう意味だ。俺が何を分かってないって!?》
《 彼女だけは、駄目なんだ。彼女だけは…!
お前達2人は、この世界で唯一…愛し合う権利を、持たない者同士なんだよ!》
父のこの言葉に、男はようやく理解するのだ。
自分の愛した女性が、自分の兄弟であると。
男の父親は、会社の跡目を継がせる男児を儲けねばならなかった。しかし、なかなか子宝に恵まれない。焦った父親は 親戚達に促されるまま、正妻とは別の女性を囲うという手段に出たのだった。
いわゆる、愛人との間に出来た子供。それが、楽の愛した女性だった。そして皮肉な事に、愛人との間に女児が産まれたのと同じ年に、正妻との間に男児が産まれた…
その男児こそが、主人公の男だった。