第58章 今日1日はお前に付き合うよ
私達は、再び喫茶店へと入る。喫茶店とは言っても、待ち合わせをした場所とは別のところだ。横文字の店名で、ガラス張りの店内は、比較的若い客層の人で賑わっていた。
1番端っこの席。広々とした店内に背を向けさせるように、楽を座らせる。
楽は珈琲、私はミルクティーを注文して、品物が来るのを待つ。そして、背もたれに体重を預けて体を休めた。
「あいつ、すげー喜んでた。ははっ、お前のゲーム好きも、役に立つ事があるんだな」
『……楽は、』
「ん?」
『喜びは、しなかったですよね。癒されも、してないでしょうし』
「春人…」
自然公園でのボートも。結局は私が空回りして、挙げ句の果てにホモカップルに間違われる始末。
ゲームセンターも、楽にとっては退屈だったと思う。私だけが楽しんでしまったような気がする。あんなにも熱くゾンビ愛を語られて、癒される人間などいるはずがない。
どうして私は、そんな簡単な事も分からなくなってしまうのか。好きな事には、ついつい熱くなってしまう癖を直したい。
「あのな、俺は」
「お待たせ致しました。珈琲のお客様は」
「あ、あぁ。俺です」
店員がテーブルにカップを置く、カチャリという音が いやに耳についた。
楽の前には珈琲。私の前にはミルクティーを置くと、店員は一礼して去って行った。
「……で、続きだけど。俺は」
『楽。少し、ここで待っててもらえますか』
「??
トイレか?」
『いや…でも少し、長くなると思います』
楽は要領を得ないという表情だったが、すぐに 分かった。と頷いてくれた。
———— 30分後 ————
『待った?』
「お前な!長くなるっつっても限度が……」
『…待った?』
「え…ぁ、いや。待ってな…じゃ、なくて…
俺も…今、来たところだ」