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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第57章 好きな人を追い求める権利すら




私がさっきまで横になっていた椅子は、ほんの少しだけ湿っていた。しかし、座るのが嫌だと感じる程ではない。
私と龍之介は、半人分くらいのスペースを間に取って座っていた。


『えっと…龍は、春人との方が話しやすい?ほら、こうやってウィッグ被って、敬語を使えば…
化粧をしてなくても、少しは春人に見えるでしょう?』

「ううん。エリのままでいいよ」


龍之介は、私が頭に乗せたウィッグを取り去る。


「いや、エリの方が、いい。って言った方が正しいかな。やっぱり少しドキドキするけど、全然嫌なドキドキじゃないんだ。
言葉遣いも、エリの楽な話し方でお願いしてもいい?だって、やっと本当の姿が見られたんだから。
なるべく、素のエリと話がしたい」

『…そっか。龍がそう言うんだったら、そうする』

「うん。ありがとう」


何から話そうか。と考えている最中、龍之介の方から質問が飛んで来る。
もしかすると、私が話しやすいように誘導してくれているのかもしれない。こういう気遣いの出来る彼は、やはり素敵だと思う。


「どうしてエリは、男装をして俺達のプロデューサーをやってるの?」

『…それは』


以前、天に説明した事と同じ内容を、龍之介にも話す。
【43章 987ページ】

龍之介は真剣に耳を傾けてくれて、頻繁に相槌を打った。そして一通りの話を聞き終わると、ようやく口を開いた。


「そっか…俺達は、エリに苦労をかけてたんだなぁ。なんというか、頭が上がらないよ。本当に、いつもありがとう!」

『…び、びっくりした!なんで龍が ありがとうなんて言うの?いつも助けられてるのも、お礼を言わないといけないのも私の方だから!こちらこそ、ありがとう!』


私達は2人して相手に頭を下げる。その後、顔を上げたタイミングが全く同じだった。バチっとかち合った視線に、思わず2人して吹き出してしまうのだった。

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