第55章 “ お約束 ” の においがプンプンしますな!
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明らかに、千の様子がおかしい。
私は、何か京都旅行で失敗してしまったのだろうか。いや。N局に着くまでは普通だったはずだ。
それなのに、帰って来てから不自然だった。意味があるとは思えない質問。悲しそうな笑顔。そして、さっきの電話。
どこからどう見ても、普段の悠然とした彼ではなくなっていた。
……Re:valeの千が、私のせいで人気を落としたらどうしよう…。
「…あのさ。春人くん、なんか元気ないと思わない?」ひそ
「そうか?いつも、あんな感じだろ。ほら、もそもそ飯食ってんじゃねぇか」ひそ
「楽はプロデューサーのこと分かってなさ過ぎ」ひそ
ガラリと空いた新幹線内。私は静かに、米を口に運んでいた。
その時。携帯の震えを感じる。見ると、なんとメッセージを送って来た相手は千だった。すぐにラビチャ画面へ飛ぶ。
そこにあった文字は、シンプルに3文字。
《 好きだ 》
『っぶ!』
「おっわ!汚ねぇな!」
私の口から噴出された米は、正面に座っていた楽に張り付いた。
いや、この不意打ちに取り乱さない女はいない。驚きの次にやってきた気持ちは “ 喜び ” でも “ 戸惑い ” でもなかった。
圧倒的な、安堵感。これに尽きた。
良かった。千は、いつもの千に戻ったのかもしれない。やはり彼が調子を崩していたら、私も落ち着かない。
やはり彼は彼らしく、いつも余裕の笑みを浮かべていて欲しい。
「携帯見てニヤニヤしないで。凄く怪しいから」
隣に座っていた天が、面白くなさそうに呟いた。
楽の隣に座る龍之介は、嬉しそうだ。そして、元気が出たみたいで良かったよ。と笑って言った。