第55章 “ お約束 ” の においがプンプンしますな!
「そ、そ…それって、エリちゃんに告白したってこと!?それで、何て言われたの!?ねぇユキ!」
「ちょっとモモ落ち着いて。べつに、告白した訳じゃない」
「…なんだ、あぁーびっくりした…!」
「でもね。僕は分かってしまったんだ。
彼女は、TRIGGER以外を選ばないよ」
僕がどれほど手を伸ばしたって。どれほど卑怯な手を使ったって。
エリは、なびかない。
今まで、ここまで自分を熱くさせた物は 音楽以外になかった。
どんな女を抱いても、口説き落としても、僕の胸は冷え切ったままだった。
なのに、彼女はこの胸に 火を灯した。
はじめは蝋燭の火のような、頼りないものだった。それが次第に大きく育ち、気が付いたら…
自分では、どうしようもないくらいにまで燃え上がっていたんだ。
「だから…手遅れになる前に、自分でその火を鎮火した」
「火?」
「そう。消化器を持ってね、こう…強引に。勢いよく、ハンドルを握って。真っ白い粉をぶっかけてやったんだ」
「…ふーん。
で?その火は、ちゃんと消えた?」
「……いや。
多分、とっくに手遅れだったんだろう。火は、僕の中のあっちこっちに飛び火して…とてもじゃないけど、全部は消せない」
「消したくない。でしょ?」
「ふふ。そうかもね」
簡単に諦め切れるなら、どれほど楽だったのだろう。
もしくは、君が僕をめちゃくちゃに傷付けてくれれば良いのに。
これでもかってくらいに酷くして。再起不能になるまで切り刻んでくれたらいい。
あぁ でも、君に付けられた傷ならば…その傷まで愛おしく思ってしまいそうだ。
そんな馬鹿な思考しか浮かばない時点で。僕はとっくに、君に侵されてしまっていたんだろう。
「それより、気付いてた?」
「何が?」
「モモは今、自分のライバル焚き付けたんだよ」
「……はぅ!そうだったぁ!」