第54章 もう全部諦めて、僕に抱かれろよ
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「ねぇ…そろそろ、顔を見せてくれる気になった?」
もう、甘い愛撫に脳が痺れて、正常な判断なんて出来そうにない。というか…おそらく最初から、私はこの男を欲している。
『ゆ、き…』
「…うん」
私がゆっくりと態勢を変えると、彼は満足そうに微笑んだ。そして、細めた目で、こちらを見下ろして言う。
「やっぱり、綺麗だ。思った通り、乱れた浴衣がよく似合うよ」
『もう、ほとんど着てないよ…』
「ふふ、そうね。じゃあもう、いっそ全部脱いでしまおうか」
彼は背を屈め、私の耳元で甘く囁く。
“ その方が、きっともっと綺麗だろうから ”
宣言通り、彼は私を一糸纏わぬ姿にまで仕立て上げた。それから、また上から見下ろして呟く。
「やっぱり。僕の思った通りだ。
月明かりに照らされた君の肌は…信じられないくらい、綺麗だよ」
ゆっくりと近付いてくる、彼の端正な顔。瞳を閉じると、当たり前のように唇が合わされる。
あっという間に 舌を絡めとられて、千の中へと持って行かれる。
そして同時に、彼の右手は私の乳房に伸ばされた。口中を犯されながら、胸をやわやわと揉みしだかれる。
堪らず上げた喜悦の声も、全部 彼の中へと消えた。
「は…、はぁ…」
『ふ……は、千…』
長いキスが終わる。互いの荒くなった息遣いに、淫欲を掻き立てられる。
千の脚が、強引に私の下肢を割った。彼の指は、淡い茂みを掻き分けて、すぐに肉芽を見つけ出す。
もうとっくに熱く充血したそれは、軽く触れられただけで弾けてしまいそうだった。
『あぁ…!!』
「っ…は ぁ、」
快感を与えて貰っているのは、こちらのはずなのに。千の顔は、まるで自分が愛撫を受けているかの如く、快楽に歪められていた。