第51章 腹いせに変なとこ触ってやる
もう、無理だ。こんなの無理だ。
何が無理って…どこに視線をやったら良いのか分からない。絶対いま顔は真っ赤だ。なんて言葉を返していいものか検討も付かない。
とにかく、全部が無理だ!!なんだ!この唐突に訪れたサービースデーは!
『ちょ…っと、お手洗いを、お借りします』
私は両手で顔を押さえて、林檎のようになってしまった顔色を隠した。
そうだ。私は逃げたのだ。この状況下で、こうする以外の選択肢は思い付かなかった。
「…あのさぁ…いっこ付け足していい?
あの人…すっげー可愛の」
「うん。分かる気がする。春人、耳まで真っ赤だったなぁ」
「私も、分かる気がします」可愛い人だな…
「もっと可愛い顔もするんだけどなぁ」ニヤニヤ
「OH…ヤマト。九条氏が、アナタのモノを捻り切ろうと狙っている表情でそちらを見ていますよ」気を付けて
私が廊下で、熱くなった頬に手を当てていると。リビングから声が聞こえてくる。
そろそろ風呂入らねぇと本気でまずいって!という声だ。
そうだった。と思い出す。私達は、入浴の順番を話し合っていたのだった。
もう顔の熱も引いたことだし、私も戻って会話に加わることにした。
私は入浴にはそれなりの時間を要してしまう。こちらから申し出て、1番最後に回してもらう事にしたのだった。