第51章 腹いせに変なとこ触ってやる
「本当に、何も見えませんね…。私、懐中電灯持って来ます。たしか あそこに…」
『足元に気を付けて下さいね』
「くそ、マジで真っ暗だな…。こうなったら、腹いせに変なとこ触ってやる」
『うわぁ!』
大和が両手を大きく動かす気配を察知し、私は割と本気で悲鳴をあげる。
すると、天が私を出来るだけ覆い隠す。
「二階堂大和、捻り切られたいの?」
「何を!?」
『あ、そうだ』
私は、ポケットにライターを持っていたのを思い出した。人は混乱に陥ると、冷静な判断力を失う。
もっと早く思い出していれば、一織を暗闇の中 ウロウロさせることもなかっただろうに。
シュボっという音と共に、辺りがほんのり明るくなる。ここにいる3人の顔が見渡せるくらいの視界は確保出来た。
「あんた、何でライターなんか持ってるんだ?助かったけど」
『火を持ち歩いていると、安心出来るでしょう』
「キミの思考って、たまに異常だよね」
私達は身を寄せ合って、頼りなく揺らめく火に縋っていた。
「ちょっと、近いんだけど」
「仕方ないでしょうが。暗いの怖いんだもーん」
「キミ、ボクをイラつかせるのが本当に上手いよ」
『2人とも、あまり動かないで下さい。くすぐったいです』
「くすぐったい、って…ボクはキミの体には当たってないけど」
「………」
「二階堂大和!!」
「ちょっ、待っ、不可抗力だって!!」
闇に乗じて私の腰に手を回していた大和の、オイタが天にバレた。
1つのソファに3人で腰掛けているので、酷く狭い。頼むからバタバタと動かないで欲しい。
「あんたら…何やってんだよ」
現れたのは、懐中電灯を手にした三月だった。彼は私達の顔を順番に照らし、呆れたように言った。