第48章 《閑話》とあるアイドルの誕生日
春人は、突然むくりと体を起こして 携帯のディスプレイを点けた。
そこに映し出されたのは、今の時刻。
『私がさっき言おうとした続きを話しても?』
「…あ、うん!勿論だよ」
それを聞いて、ようやく思い出した。
さきほど、俺と春人は同じタイミングで話を始めようとした。そして、俺が先に話す権利を譲ってもらったこと。
だから、まだ彼が何を言おうとしていたのか聞いていないのだ。
『あと少し気付くのが遅れていたら、タイムオーバーになるところでした』
「タイムオーバー?」
春人は、ポケットに手を入れると 小さな包みを取り出した。それを俺が受け取ると、ほっとしたように笑みをこぼした。
それから、おそらく今日ずっと伝えたかったであろう言葉を。ようやく口にする。
『誕生日、おめでとうございます』
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