第48章 《閑話》とあるアイドルの誕生日
もう秋だというのに、相変わらず俺の故郷は暖かい。真夏とまではいかないが、まだまだ海水浴だって楽しめる気候。
そんな中、海岸での撮影は始まった。運良く快晴で、レフ板の必要もないくらいだ。
カメラマン1人に、スタッフが2人。それに春人と俺を入れても、5人。
そんな少人数での撮影は、あっという間に終了した。
「え、もう終わり?」
『はい。今回の撮影は、ブロマイド用に5枚と伝えてあったでしょう』
「うん。でも、春人くんのことだから 他にも ついでついでで、結局1日仕事になると覚悟してたんだけど…」
『人を仕事の鬼のように…。まぁ否定はしませんが、今日は本当にこれで終わりです』
すると、春人は水着姿の俺をじっと見つめた。
「さ、最近腹筋してないのバレた?」
『いえ、そういう事ではなく。ただ…いいなぁって、思いまして…』
「春人くんも、腹筋割りたいの?」
『いや。羨ましさからの、いいなぁ ではなかったんですけど…。
あぁもういいです!ほら、時間は有限ですよ。何して遊びます?どこから行きます?お付き合いしますよ』
俺の胸は、密かに踊った。いや多分、全然隠し切れてなかったと思う。
仕事以外の時間を、彼と共有出来ると 自然に顔が綻んでしまったのだから仕方ない。でも春人も、心なしか浮き足立っているようだ。
なんて。こんな考えは、俺にとって都合の良い 勝手な解釈だろうか。