第6章 この子はオレとユキのお気に入りなの!
「モモちゃん、ユキちゃん!挨拶来てくれたの?ありがとねー!」
「今日もよろしくね!樋口さんのカメラで、オレのユキ!カッコよく撮ってあげてねー」
「こらこらモモ。僕は元が良いから大丈夫だよ」
「はっ!そうだった。オレのユキは超絶イケメンだった!」
「あはは!相変わらず面白いねぇ2人は」
現在、今日2人を撮るカメラマンの控え室に来ていた。
2人が訪れる部屋部屋には、必ず笑顔が溢れている。フレンドリーに、朗らかに。
…そうか。彼らは自分達で仕事場の雰囲気作りをしているのだ。
私は胸ポケットの手帳を取り出し、ペンを走らせる。
“ Re:valeは 自分達の手で場の雰囲気を作 ”
「ところで、彼は?」
!!
カメラマンの視線が、急にこちらを捉える。
しまった。Re:valeの観察に夢中になっていて気を抜いていた。
軽い変装で、黒縁メガネをかけているというのに。彼はメガネの奥の 素顔に迫ってくる。
まさか八乙女事務所の名刺を渡すわけにもいかないし、どうして挨拶をしたものか…!
「彼は職業体験中なんだよ」
「そうそう!オレ達の熱烈なファンの子でねっ、今日はRe:valeの付き人体験中ー!優秀ならジャーマネにスカウトしちゃおうかな!なんてね♫」
百と千が、すかさず助け舟を出してくれる。しかし、なんとも適当な説明である。
「へぇ…て、ことは素人さんかー…ふむふむ…」
百が樋口と呼んだカメラマンは、顎をさすりながら私との距離を詰めてくる。
『あ、はじめまして、私は』
「君良いねぇ。素人にはないオーラを持ってる。ねぇ、良かったら今日ちょこっとモデルを」
私が何か言うよりも、百の口が動く。
「ダメダメ樋口さん!この子はオレとユキのお気に入りなの!」
私に体を密着させ、肩を抱き寄せる百。
千も、私の隣に来て 肩に手を乗せて静かに言う。
「そうだよ。他の人は、お触り禁止」
私は2人に挟まれ何も言えず、ただただ体を硬直させる。
「ちぇー。なんだよケチー!良い素材見つけたと思ったのになぁ!」
どうやらカメラマンは、諦めてくれたようだ。