第45章 私のところに、帰って来て欲しい
楽屋への扉を潜り、受け取った紙袋を開いてみる。するとすぐに、甘い香りが鼻孔をくすぐった。
「わ、メロンパンだ」
「いい匂いだなぁ」
外はサクサクで、中はフワフワ。これは、コンビニなどのメロンパンではない。きっと、屋台とかで売られている 焼き立ての奴だ。
「うう、美味しい…」
「美味いなぁ」
メロンパン。それは、思い出の味。
気が付けば、大きなメロンパンを3つも食べてしまっていた。でも、とてつもなくフワフワだったから きっと0キロカロリーだ。
しかし、そんな事を言えば また社長に “ それがアイドルの言う事か ” と怒られてしまうだろう。
そして、怒られてシュンとする私に “ まぁ ミクは少しくらい太っても余裕で可愛いから大丈夫 ” なんて言って。この身を抱き締めてくれる、大好きなプロデューサーは もういない。
「そろそろスタジオ入りしとこうか。お前は出演者の中で最も新人だからな。1番に入っているくらいでないと」
社長の言葉に頷いて、私は衣装に着崩れがないかチェックして 楽屋を後にした。
Aスタへと戻ると、まだ出演者は誰も来ていなかった。
用意されている、20組分のアイドルの椅子。私は自分の席を何度も確かめて、腰掛ける。
少し待っていると、続々と人が集まって来た。そこには、TRIGGERとRe:valeの姿もあった。深く考えなくても、体が勝手に立ち上がった。
そして、深々と礼をする。
すると、百は元気に両手を頭の上でぶんぶんと振って答えてくれる。他のメンバーも、軽く手を上げてくれたり、笑顔を返してくれたりした。
その姿を見るだけで、観客席からは黄色い悲鳴が上がった。私にも、声を上げたくなる その気持ちが分かる。
だって、彼らは あまりにも格好良いから…