第45章 私のところに、帰って来て欲しい
「歌い終わってみたら、春人くんの姿がどこにもなくて…。俺、悲しかったよ」
「あんたは、何だっていつも肝心な時に姿くらますんだ」
『…面目無いです』
楽屋へと帰って来たのだが、私は早速メンバーに問い詰められた。撮影現場を飛び出して、一体どこへ行っていたのかと。
龍之介と楽は、私に詰め寄った。そこへ、Re:vale様が仲裁に入ってくれる。
「まぁまぁ。そう熱くならずに」
「春人ちゃんにも、色々と事情があるんだって!」
「事情って、どんなすか」
「え?う、うーんと…それは〜…」
楽に問われ、百は懸命に答えを取り繕おうとする。そんな時、天が何やら思い付いたように言う。
「そういえば、前々回のブラホワの時も、こうだったよね」
「あぁ…うん、そうだった!春人くん、結果発表の時にいなくなっちゃったんだよな。たしか」
「あったよな、そんなことも。なんか懐かしいな。
それで俺達は、いなくなった あんたを探して、あちこち走り回ったんだ」
3人は、当時のことを思い出して 懐かしんでいるようだ。私もそんな彼らにつられて、少しだけ顔が緩む。
「今から思えば…ボクらはキミに褒めて欲しくて、トロフィーを持って走り回っていたのかも。
ちなみに、今も同じ気持ちだよ」
『天…』
「どうだった?ボク達のカバーは」
「歌は、ちゃんと聴いてたんだろ」
「俺達、上手く歌えてたかな」
また胸に熱い思いがこみ上げて来そうになるのを、ぐっと堪えて顔を上げる。
そして、3人に向かって言葉を紡ぐ。
『最高でしたよ。やっぱり、貴方達が最強です』
そう告げると、彼らは心底嬉しそうな笑顔を 私にくれるのだった。