第2章 センラ
それから、月日が経って約一ヶ月後。週に一度のセンラさん宅の訪問も次で五回目となる。明日がその訪問の日なのだが。少しばかり気が重い。というか、とても今、落ち込んでいる。
実は二度目の訪問以来、センラさんをイかせてないのだ。
なぜか回数を重ねる事に緊張が増し、感度も増し、酷く敏感になりながら行為に及んでいる自分をみて、センラさんの加減具合に拍車がかかったのはいうまでもなく。
最近では普通に話するのですら、ずっとドキドキしてギクシャクしてしまう。体がおかしくなってしまったのではないか、と思うほど彼をみると鼓動が高まるのだ。
明日こそは、冷静に。そう心に誓って事務所のドアを開けた。
「ただいま戻りました。日勤、終わりました」
事務所の中には私と同じように日勤の家政婦の仕事を終えた子たちが数人戻ってきていた。彼女達の活動報告書を書き込む手が一斉に止まる。
私へと視線を向けた後、そのまま、何もなかったかのように、誰も事務所の中に来なかった、扉など開いてはいないとでもいうように無言でまた報告書へと向き直した。
最近、周囲の自分への風当たりがとても強い。今まではこんな風に露骨に態度に出すような人はいなかった。しかし、数週間から状況が日に日に悪化している。その原因はわかってはいるのだが、如何せん、良い解決策が浮かばないのだ。
「お疲れ様です」
その中で唯一、私へ挨拶を返してくれる子がいた。身長が150センチあるかないか、小学生に間違えられることもあるという彼女は意外にもここで五年ほど働いている。年齢も26才とここでは年長者と呼ばれる層に入っていた。
色素の薄い瞳、髪は彼女の透明感ある肌によく映える。今にも、存在そのものが消えてしまいそうなほど儚い印象を私は彼女に持っていた。
その顔だちは無表情で滅多に感情を表には出さない。口数も少なく、いつも一人でフラフラとしている一匹狼タイプの子だ。