第2章 センラ
「確かに。はじめは少し怖い人だなって思っていました。でも、それは本当に最初だけで。話せばすぐに優しい、気遣いの上手な人なんだなってわかるし。それに、なにより落ち度があったのは私のほうですから」
グッと体を近づけて、顔をみたくて腰をあげる。普段なら彼の方が自分を見ることが多くて、私の方が視線をそらしがちだが今は違う。
ジッと視線を送り続けていれば、それに気付いたセンラさんの顔がゆっくりとこちらに向いた。
「やっと見つかった子やから。大事にしようって思ったんよ。やけど、中々思うようにはならへんなぁ。浮かれてつい、自制きかんくなってしもた」
苦笑いをする彼が少しだけ、泣いているようにもみえて。
「今日はもうこのまま最後までお話でもしてよか?無理させちゃってごめんね」
そう、センラさんは言うが先ほどからチラチラと当たる欲の感触がなんとも気になる。完全に屹立しているし、硬くなってるし。
言葉にしようとして躊躇いが生じた。きっと、これを言ってしまったら最後。後には引けなくなる。
自分がどうにかなってしまうのではないかと不安に駆られる。でも、それよりもなによりも、彼を優先にしたい。
それに私は彼にふれてもらえるのがとても好きだし、幸せなのだ。
「もう契約の時間ですよね。お仕事、させてください」
「いや。だから無理せんでえぇって」
「いえ、仕事ですので。きちんとさせてください」
仕事だということを盾にとれば、センラさんも要求をのんでくれるだろうと考えた。だから、あえて強調させた。
「仕事、ね」
声のトーンが、下がる。瞳の奥に闇が広がる。
あぁ、間違えた。また、言葉の選択を間違えてしまった。
暗く沈む声。苦みが、胸に染み渡るような感覚。