第2章 センラ
それは、割れ物を扱うかのように丁寧な動作だった。
ゆっくりと、慎重に、彼は私の体をさわる。シャツのボタンを外して服を脱がせる時だって、チノパンやショーツをおろす時だって。
そして逐一、様子を伺うように顔を覗き込む。少しだけ不安そうに、たおやかな笑みを向ける彼の視線がくすぐったい。
そんな風に大切に、大切にと扱わないでほしい。どうしていいかわからなくなる。本当は凄く嬉しいのに、反面、ひどく照れくさくて恥ずかしい。
だから、私は彼の視線から逃れるようにそっぽを向いた。彼の優しさを、見ないふりをした。
「香澄」
突然、彼が自分の名を呼んだ。いつもつけるはずの『ちゃん』が外れている。その事に驚いて、思わずセンラさんに視線を戻した。
「やっとこっち向いた」
そう言って、彼の唇が落ちる。私の唇に重なって少し強めに押し付けた後、徐に首元を吸い上げられた。
「ひぁッ!」
思わぬ刺激に変な悲鳴が上がる。唇を離した彼が着ていたカットソーを乱暴に脱いだ。
「俺にもつけてえぇよ」
そう言って、昨日私が口づけした鎖骨部分を指さした。吸い付きが甘かったらしくうっすらと淡いピンク色になっている。
「え…でも…。残さなくていいって昨日は…」
言っていたのに。そう言いたげに私が訴えると彼は可笑しそうに喉を鳴らした。
「近々会うんに、わざわざシルシなんか残さんでもえぇやろ。まぁ、さすがに次の日になるとは思わんかったけど。次回の予約は少し先になりそうやし。キスマーク、つけてえぇよ」
誘われて、昨日と同じ、黒子のある鎖骨部分に唇を挟む。また、強く吸い上げてみるものの上手く赤くはならない。
「もっと柔らかいところやないとつかんとちゃう?」