第2章 センラ
「チョコ、嫌いやった?」
「いえ…」
この人には、本音しか通じなさそうだ。そう、観念して私は口を開いた。
「センラさんの冷蔵庫をみて、シンプルな板チョコ系が好きなんだなって思ったので…。1番派手な、変わり種のようなタイプを選んで食べました。咄嗟に選択したので、まさか自分が苦手なイチゴ味だと思わなくて」
「なんでそんな気ぃ使うん?それで嫌々口にされても嬉しくないわ」
「気を使ったわけではないんです。私、センラさんの笑った顔が好きで。自分の好きなものだけ残ったのをみて、ただ、嬉しそうに、笑って欲しかっただけなんです。でも、逆に不快な思いをさせてしまいました。すみませんでした」
それだけ言って下を向いた。床に広がる木の木目をぼんやりと見つめていると「ほんま、好きもんやなぁ」という声が聞こえる。
彼の両手が優しく私の顔を包む。そのままゆっくりと顔を上げるように促された。
「アホやなぁ、自分」
私を見ながら、そんな辛口をセンラさんが叩く。そう、呟いて彼は優しく柔らかく笑った。
あぁ。それだ。私が、すごく好きな笑顔。
たまらなく愛おしく感じて。彼の上唇に自分の唇を挟むようにキスをした。
自分よりもひとまわり大きな手が顔に触れる。唇同士が深く交われば、じんわりと心の奥があたたかくなった。
優しくて心地良くて、安心してずっとこのままと望みたくなる。そんな感情が浮かべば、ふいに、唐突に、泣きたくなった。
どうしてなのか?自分でもわからない。けど、気を許したら今にも涙が溢れそうだった。
自分の中に湧き上がる感情の正体がつかめなくて戸惑っていれば、彼に手をそっと握られる。
緩やかに誘導されながら寝室へと入れば肩を抱かれてベッドへと寝かされた。