第2章 センラ
そう笑いながら彼は冷蔵庫の奥からお洒落なデザインの紙箱を取り出した。蓋を開けると中には一粒、一粒が小部屋に入れられた高そうなチョレートが並んでいる。
所々、無くなって空洞になっているのは少しずつ彼が食べ進めているのだろう。
「貰い物なんやけど。好きなのとってえぇよ。といっても、もう残り少ないんやけどなぁ」
宝石のように連なったチョコたちを見つめながら、私は彼の冷蔵庫にいくつかのチョコが確保されていたのを思い出した。どれもノーマルタイプの板チョコだったのを覚えている。余計なものが施されていない、タブレットタイプのものがお好みらしい。
(ということは、少し風変わりなデザインのものを選べば…)
私は彼が好んで食べなそうな、派手なデザインのチョコレートを一つ取り出した。ピンクのハートがデカデカと描かれているものだ。これ以外はみな、シンプルなデザインで何も装飾が施されていないものだった。
(ピンクのハートかぁ。まさか、ストロベリー味じゃない、よね?)
私は果物の苺は食べられるものの苺味のお菓子があまり好きではない。というか、苦手だ。
子供の頃、大量にストロベリー味のお菓子を食べて嘔吐したことがあり、以来少しトラウマになりつつあるのだ。
「い…いただきます」
意を決して口の中にチョコを放り込む。入れた瞬間に理解した。あぁ、これ…イチゴだ。
どんなに高級で美味なチョコでもイチゴだけは不味さを感じる。広がる甘酸っぱい香り、味。と同時に思いめぐる、あの嘔吐物の味。
(う…コレは中々キツイ…)
「……ごちそうさまでした。おいしかったで」
「嘘つけ。顔、青ざめとるよ?」
なぜ、こうもこの人は他人の気持ちを忖度するのが上手いのか?
自分はそれほど気持ちが顔にでるタイプ、というわけでもない。結構、今までは誤魔化しのきく方だと思っていたのに。