第2章 センラ
「ほんっとうに!本当にすみませんでした!今!すぐに!お取りしますので…」
「いえいえ〜。こちらこそすみません。会計時に気付いたら良かったですよね。後々で手間とらせて申し訳ないです。あっ、焦らなくて大丈夫ですよ。ほら、お客さんも僕たちの他にいませんし」
予想外の失態にパニックを起こしそうになっていた店員に彼はすかさず声をかけた。
(声のかけ方上手いなぁ…)
相手がこれ以上気に病まないようにとフォローをいれ、落ち着いて作業できるように自然に誘導している。本当に、大した人だ。
「もらってきたよぉ。帰ろっか?付き合ってくれてありがとね。なにか欲しいものある?飲み物はいっぱいあるから甘いお菓子とかおつまみ系もうちょっと足そうか?」
そう私に話しかける彼をみて、あぁ、この人は口数が多いんだ…とわかる。
(私だったら、時間をとらせてすみませんでした。の一言くらいしか出てこないや)
自分は口下手で、いつも思っている事の半分も相手に伝える事が出来ない。昼間の仕事のように定められた会話内容がある程度決まっている場合なら平気なのだが、今この状況のような、内容が定まっていない雑談が苦手だ。
どんな話が来るのか予測が出来ない不安。
突然の話題に臨機応変に返せるほど頭の回転も速くない。
せめて、直感的にポンポンと話せれば良いのだが。相手に対して適切な返答だろうか?不快にさせる内容ではなかったか?など色々と考えすぎてしまう。
「いやぁ〜。やっと着いたなぁ。付き合わせちゃってごめんねぇ」
センラさんの自宅へと戻ると謝罪の言葉が隣から聞こえた。いそいそと忙しなく彼は大量の飲み物を冷蔵庫に入れる。
「手伝います」
「えぇよぉ。今日は家政婦さんで頼んだわけやないんやし。ゆっくりしといて」