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【R18】家政婦の記録簿【うしさせ】

第2章 センラ


こうして二人で歩いて雑談しているとわかるのは、私がどんな話題をふっても、彼は興味深そうに聞いて話を膨らませてくれるということだ。
私がどんなに詰まった返答をしても次に繋がる言葉を、センラさんは返してくれた。

だから、この人と会話をする時は気まずい沈黙など恐れなくていいし、一方的にどちらかがマシンガントークをするなんてことにもならない。

ようは、彼との会話は話しやすいのだ。一度、話をすれば誰もが思うはずだ。また、この人と話をしてみたい、と。

自分もセンラさんのような会話術があったなら。そう羨ましく思った。

モデルや女優のような完璧な美貌を持つ子が今働いている事務所には多い。その中で私の存在は明らかに異質だった。元々、昼の部だけの契約だったから当たり前と言われればそうなのだが。

夜勤をしていない時も、あの子は昼間だけだから…と遠巻きに見られることが多々あった。どこか周囲と壁ができているように感じていた。

夜の仕事もすると決めた時、なんであの子が?という視線をみつけた。場違い、何を勘違いして…という感情が彼女達から伝わってきた。

もし、私がセンラさんのようにコミュニケーションに長けていたら、素朴で地味な自分も一つの個性として上手くあそこの人達に言い伝え、溶け込めていけたのではないか?

例えば、イケメンだらけのジャニーズの中にお笑い枠と言ってポジションを確保する彼らのように。
三枚目の役を得意とする、あの俳優さん、女優さんのように。

コンビニについたセンラさんは私を店内に待たせて、一人でレジに向かった。対応した店員さんはそこでバイトをはじめたばかりなのだろう、研修生の文字が綴られたバッチをつけてペコペコと懸命にセンラさんに謝っている。それに並ぶようになぜかセンラさんまでペコペコと頭を下げだした。
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