第2章 センラ
まるで、はじめてのおつかいを失敗した子供のように、悪いことをしてご主人様に叱られた後の仔犬のようにしょんぼりとしている。
背格好の高さに比例するかのように小さく縮まる体。普段とのギャップも相まって、自分の中の母性をぎゅっと摘まれる思いがした。
「も、もう一度戻って、もらってきましょう?」
思わず頭をナデナデしたくなる衝動を抑え、そう提案する。「ん…」と小さく返事をした彼の横に並んでコンビニまでの道を歩く。
ゆっくりと、私の歩幅をみながら、あわせるように彼は歩行を進めた。私よりもずっと長いその足が一歩、一歩とスローモーションのように動く。
それにあわせて揺れる大量の飲み物がやけに重そうに感じた。
「あの、荷物半分持ちます」
そう提案してすぐにしまった!と後悔する。今、彼は右手に大量の飲み物が入った大きなスーパーの袋を一つ。左手に焼き鳥一本入った小さな袋一つ持っている状態。
どう考えても半分にするのは無理だ。大きめの袋がせめてもう一つあれば良かったのだが。
「じゃあ、これお願いしよかな」
焼き鳥一本入った方の袋をセンラさんは私に差し出した。その時、『考えなしに発言してしまった』そう落ち込む私の気持ちまで彼は読み取ったようだ。
物腰の柔らかな笑みを向けて「やっぱり、こっち一緒に持ってもらおかな?」と飲み物の入った袋の片側だけを私に向けた。確かにこれなら、二人で重たい方の袋を分け合って持つことが出来る。
「センラさんってフォロー上手ですよね」
くしゃくしゃに縮まったビニールの取っ手部分。それを握りながら改めてそう感じた。私の顔色をみて慌てて、軽い焼き鳥の袋ではなく飲み物の方をなんとかして差し出す。私の、場にそぐわない気配りが無駄にならないように、と。その小さな彼の気遣いが申し訳なく思う反面、少しだけ嬉しい。