第2章 センラ
「あの、今日の夜の部のお代。私に支払いをさせてもらえませんか?」
最後に、きっちりと自分の不手際の責任を取らなければいけない。結局、私は何一つまともな性サービスができていなかったし、これで夜のお高い料金をもらうのは違う気がした。
しかし、自分のその言葉一つでセンラさんがとても困ったように笑った。瞬時に理解する。この人に言うべき話題ではなかったのだ。
「すみません。やっぱり今のは忘れてください」
帰ってまず、課長に直談判するべきだった。店側から値段指定されればセンラさんも納得せざる終えないはずだ。
「その顔。俺に言うても無理そうやから、帰って上司にでも相談しようって魂胆か?」
普段の甘い、柔らかな声が消える。低くて温度のない、感情なんて一切入っていない声色。的確に思考が読まれて、思わず顔が引き攣る。やばい、面に感情がでてしまう。
「自分、わかりやすいなぁ。…よぅ理解したわ。俺が満足すればえぇんやな」
大きな、自分よりも何十センチも高い彼がグッと近付く。笑いもせず、無表情な何も映らない、真っ暗な瞳が私をみる。
センラさんの手で私の下半身に身につけていたものが全て膝下までずり下ろされた。
「あと十八分」
時間を読み上げた後自身の下半身も僅かに露出させ、私の片足を太ももをかかげてグッと高くあげた。
「せん、らさ…」
怯えをふくむ私の目を彼の広い手のひらで包まれる。視界が遮られ、わかるのは手の隙間から僅かに感じる淡い光だけ。
「怖いんやったら、みんでえぇよ」
最後にみた彼は、私の顔色をみて苦しそうに表情が歪んでいた。この手は、私の視野を遮るというよりも彼が、私の顔色をみなくて済むようにしているように思えた。