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【R18】家政婦の記録簿【うしさせ】

第2章 センラ


どうして、この人はこうなのだろう?

厳しい言葉を吐き出す時、いや、それに限らず。彼は逐一私の顔色を伺う。それがひどく、もどかしい。

私はこの人の言葉を嫌だと思ったことなんてないのに。彼のキツい言葉には必ず裏に秘めるメッセージのようなものがある気がした。隠された彼の意思、本音、思い。叶うならば、その全てを理解したいし、わかりたい。そう思っている。

だから、自分に気を使わないでほしかった。

鋭い視線をもつ彼が、鋭い物言いを好む彼が、時折りみせる儚げな表情。それが垣間見る彼の弱さのような気がして居た堪れなくなった。

抱きついて縋りたくなる。その衝動を必死に抑え込んだ。

「私、ひとつだけなら見つけられた気がします。この仕事の楽しさ」

そう口にすればセンラさんはゆっくりとこちらに顔を向けた。

「この仕事をしていなかったら、センラさんにはきっと出会えなかった。私、そこは良かったなって思えてます」

スッと切れ長の目が細められる。見定めるように、私の内側を見透かすように。

「私。センラさんのような人、好きです。センラさんみたいな考え方、価値観。自分にはないものだから。憧れるし、もっと、もっと知りたいって思ってます」

改めて言葉にすれば、なんだかとても安易な気持ちに思えた。でも、本心だ。

ふっ、と緩く彼が笑う。目が細められて大きめの口が横に引かれる。わずかにできるホウレイ線。それがなんだかグッと大人の雰囲気を醸し出して、思わず鼓動が早くなった。

「ありがとうなぁ」

それだけ言うとふぅ、と軽くため息をついた。少しの沈黙が続いたのち「じゃあ、夜の方お願いしようかな」と彼は立ち上がる。

「寝室、行きますか」

彼の言葉に促されるように自分も立ち上がれば、見上げる形でセンラさんと視線があう。

綺麗な切れ長の目。その中にある瞳だけが動かされ、私を捉えた。身体中が熱く、たぎる。
身悶えしたくなるほど、美しい流し目。それだけで呼吸が荒くなって、返事が遅れる。
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