第1章 あほの坂田(となりの坂田)
いまだ中指で花芯を弄り続ける彼の手首をとる。体勢をかえたい。坂田さんの顔がみたい。そう、訴えたくて。
自分にとってはこれが精一杯の行動だった。
「なに?ここ弄られるんそんなに気に入ったん?」
そう言って彼の指が中指から人差し指と親指へと変わる。2本の指の腹で花芯を摘まれ、両腹で赤く突起したそこを擦る。
腰を激しく打ちつかれて互いの皮膚が勢いよく当たる音が響いた。
「あぁぁッ!ちがッ…ぅの」
シーツを力いっぱい握りしめ、大きく体が揺れる。今日、何度目の絶頂なのだろうか?昇天に達しすぎて意識がもうろうとしてきた。
「違うん?その割には締まりえぇけどな」
そう言って、彼はやっと体位を変えてくれた。久しぶりにみた坂田さんは、顔だけ汗だくで髪がしっとりと濡れている。ぬぐってもぬぐってもたれてくる汗を鬱陶しそうに手の甲でこすった。
苛立ちをふくむその表情さえもやけに官能的にみえて、思わず生唾を飲む。顔はかわいいのに、しっかりと男の欲を醸しだす。そのギャップに酔いしれた。
強い眼差しが私を捕らえる。視線が絡めば、膣奥を占領する彼をきゅっと締め付けた。
すると、苦しそうに高く喘いで、彼の体が自分に沈む。体重をかけて更に奥へといざなわれた熱が膨らみを増すのがわかった。
「かお、みたかった」
近づいた彼の頬に頬ずりをしながらそう訴えれば、くすぐったそうな高い笑いが耳を掠める。
「俺も」
甘い、甘い声で嬉しそうに彼が言う。
「香澄のイッた顔、みたいおもてた」
……ん?なんか違う。
即座に硬直した私の表情をみて、楽しそうに坂田さんは笑った。あひゃ、とその独特の笑い方で吐いた息が耳にあたる。